主人公がいい。

人間は会話で出来ている。

なんにせよ新しい一歩の点火剤になることは間違いないのかもね。

 

 

「こういうところに連れてきて欲しかったのよ。」

不慣れな手つきでワイングラスを傾けて、イメージ通りのテイスティングをしながら彼女は言う。

 

 

会ったのは久しぶりで、もっと言えば、通算二回目の対面。

彼女とは友人が開催した飲み会で知り合って、メールをして、飲む約束をした。

年齢で言うと自分より三つ上の年上女子だった。

 

「正直ね、私、失恋したばっかりなんだよ?笑」

 

何かを牽制するかのように、もしくは自分主導にするために

今までの話の流れを裁断した。

 

「なんで別れたんですか?」

彼氏の有無を聞く前に自分から吐露しちゃう人はガードが甘いって昔教えられた。

瞬間、自分の誕生日が終わったときと同じ気持ちが湧いた。

 

「相手が結婚に興味なかったんだよね」

「何歳の人だったんですか?」

「確か、君とタメだったはずだよ」

「この年齢だと結婚を意識してる人はわりと多いと思いますけど、踏み出せる人はなかなか少ない気がします。笑」

 

男性の結婚適齢期は所得とか会社でのポジションに影響されて、だいたい30代前半になるらしい。女性側の結婚への強い意思と男性側の都合を一致させるのは難しそうだ。

 

「でも、結婚式を見たら結婚への意識も変わると思うのよ。だから待とうと思ったしね。でもね、もう待てないから別れることにしたの」

 

結婚式は、男性が結婚に対して抱く将来もしくは現状の不安感を払拭させてくれる。良くも悪くも自分を重ね合わせて想像させてくれる。でも逆に、この人とじゃだめだっていう別れの引き金にもなる。なんにせよ新しい一歩の点火剤になることは間違いないのかもね。