主人公がいい。

人間は会話で出来ている。

屋根のある歩道まで走り始めた。

 

https://flic.kr/p/fhsW5B

 

 

「俺、やっぱり全知全能になりたいねん」

 

京都観光中、一日目は快晴で肌も焼ける程の燦々とした太陽であったが、最終日、お土産を買う頃合いには、地面をえぐる程の豪雨に見舞われた。地下鉄に乗る前と後では、外の景色がまるっきし変わっていた。一旦、地下鉄内のコンビニに立ち寄り大きめの傘を購入して相合傘で帰ることにした。

 

「まだ神を目指してるの?」

「やっぱり俺、神になりたいねん、って思った」

「でもお前、運動苦手じゃなかった?」

「スポーツなんもできへんで」

「じゃあ、全知全能無理やな。全知無能や」

「なんやそれ。ありそうやな。笑」

 

大粒の雨に打たれ、強風に煽られた傘は間もなくYの字になり、傘は数分もしないうちに損壊した。不届き者の発言が天に漏れたのか、天候がその怒りを表していた。

 

「全知は無理だから諦めた方がいいよ」

「そうなんかなあ」

「全知って、量の問題でしょ。時間が有限である限り全量を取るのは無理だよ」

 

彼の表情はみるみるうちに曇っていく。体重を支えていた杖がぽっきり折れように、右に右にふらつき、右肩が雨で濡れる。

 

「それなら、質を求めた方がいいと思うな。質なら極めることも出来る、と思うし」

「なるほど。深く知ると書いて深知ってことやな。これもありそうや。」

「うむ。深知無能だね」

「・・・よぉーし!!」

 

と曇った表情が嘘かのように眼球を輝かせ、相合傘から飛び出し、豪雨の中を駆け走り、屋根のある歩道まで走り始めた。