皆との談笑中には一度も話に出なかった映画ではある。
「アカデミー賞の脚本賞は観るようにはしていますね」
年末年始は男4人で大阪に旅行に行った。カウントダウンは、東京のみなとみらいで別の友達と時刻を迎えたが、1月1日にカウントダウンをしてその足で、大阪行きの新幹線に飛び乗ったのだ。
「そんなのあるの?」
「ありますよ」
旅行の目的は主に観光であった。道中では大阪ならではの食べ物をたくさん食べた。お好み焼きやたこ焼き、横綱という串屋はべらぼうに美味しかった。
「アカデミー賞はいろんな種類がありますからね。そのうちの一つです」
移動はほぼタクシーで移動して、電車はほとんど使わなかった。理由は混雑するところが嫌だったというのが大きいが、やはり単純には歩くのが面倒くさかったからに他ならない。大阪は遊び場が密集していて、タクシーも手軽に捕まえられるので暇を弄ばすには十分だったと思う。タクシー代の合計でいってもおそらく2000円は行かない程度であろう。
「なんで脚本賞なの?」
初日は、あべのハルカスという地上300メートルで日本一を誇っている超高層ビルで夜景を眺めた。スカイツリーや東京タワーとは違って、大阪の夜景を360度見渡せるのがとても奇麗だった。中央には、空中庭園というところがあり、地上300メール上にも関わらず天井が突抜式だったため、丁度降りしきる初雪を浴びることが出来た。
「自分が脚本賞を観る理由は、面白いストーリーに出会えないかとか面白い言葉がないかとかで観るようにしています」
夜景を眺めて、新世界の横綱という串屋でご飯を食べた。各自タレを付けて食べる形式で、もちろん二度付けは禁止。そこで働いていたイカツイ女の子と話が弾み、年齢を聞くと17歳の女子高校生であったことが一番の驚きだった。それ以外は、アイスクリームの揚串が珍味すぎたが、意外に美味しくて驚いた。
「特に面白かったのはある?」
ご飯を食べ終え、夜の繁華街に遊びに出向いた。ふらふらと歩いていると18歳くらいの背の低い女の子が近寄って来て、お店に誘われた。いわゆるガールズバーの客引きである。ガールズバーでいろいろあった後(後述)、自分たちのホテルに戻り、お風呂に入った。そして、近くのコンビニでお酒を大量に買い占め、一つの部屋に集まって、談笑を始めたのだ。最初は、一日の総括から話が始まり、次にガールズバーでのことや仕事の話ときて、映画の話をしたのだ。
「シンドラーのリストは面白かったです。映画ではじめて泣きましたもん」
「涙あったんだね!」
その後もまだまだ映画の話をし続けた。マイレージマイライフやパーフェクトワールドやミストやグラディエーターなど、たくさんの話をした。映画の話をするのも聞くのも、ホテルの狭い部屋でお酒を片手に映画などの話をする瞬間がなんとも言えない楽しい空間なのだとこの旅行で気付いた。
「ありますよ。笑 まあ、これ、脚本賞ではないんですけどね」
「違うんかい笑」
話を聞きながら、スマホでは『アカデミー 脚本賞』と調べてみた。するとたくさんの過去の受賞作品を確認することが出来た。その中から今日夜見る映画を決めた。エターナル・サンシャイン、皆との談笑中には一度も話に出なかった映画ではある。